こんにちは。慶国寺の渡辺知応です。
何らかの事情で無縁仏になってしまうには様々な理由があります。
人生の背景は人それぞれ違うので、無縁仏になってしまう理由も様々です。
なぜ身内がいたとしても多くの方が無縁仏になってしまうのかその理由を探ってみました。
今回は無縁仏になってしまったケースを3つご紹介いたします。
すると、そこにはある共通点がありました。
お墓がなくて、電車の荷物棚に遺骨を置き去りにした、遠い親戚の話
★このケースは友人の田島さんが葬儀社に勤めていた時のお話しです。
経緯を簡単にまとめると以下のような出来事でした。
- 15年前、大手の葬儀社に島田さんは勤めていた
- 自社の終活イベントで鈴木さんという女性と知り合う
- 世間話から鈴木さんには身寄りがいないことやお墓がないことを知る
- その後、鈴木さんが亡くなった連絡が営業部を通して入り、島田さんが葬儀の担当になる
- 身寄りがなく、お墓がないことを知っている島田さんは気がかりだった
- 営業部は運よく遠い親戚を見つけ出し、どうにか連絡が取れた
- 葬儀は喪主の意向で「直葬」で行われた
※「直葬」とはお通夜や葬儀をせず、そのまま火葬式を行うことです。
最近ではそのような形態で行う方も増えてきましたが、15年ほど前はまだ珍しい形でした。
家族や身寄りがない方や家庭のご事情により火葬式だけを行う、必要最低限の葬儀形態です。
田島さんの火葬日当日とその後の経緯
島田さんは、せめて自分が丁寧に見送ってあげようと思い、準備のために火葬場に出向く
直葬は遠い親戚の男性と島田さんの二人だったが、無事に終わった。
火葬後のお骨を男性に手渡す際に島田さんは「何かあれば連絡して欲しい」と言い自分の名刺を渡した。
後日、島田さん宛に警察の遺失物係から連絡が入る
警察はこのように話したそうです。
「昨日、電車の網棚にお骨が置かれており、遺失物として警察に連絡がありました。中身を確認したところ、持ち主の手掛かりになるものは何も入っていませんでした。しかし島田さんのお名刺だけが入っていたのでご連絡をした次第です。」
その後、親戚の男性と連絡を取ろうとしたが一切連絡がつかなかったそうです。
結果的に鈴木さんは行政が管理する無縁仏用のお墓に今も寂しく眠っている
島田さんは当時を振り返り、こう語っています。
「自分が当時の葬儀社で働いていたときに起こった、後にも先にもない、とても心が痛かった出来事だったよ。ご遺骨が電車の網棚に置かれるなんて都市伝説くらいにしか思ってなかたけど、まさか自分が立ち会うなんて。今となっては言い訳にしかならないけど、当時は入社したばかりで身寄りのない方のフォローの仕方がわからなかったんだよね。もっと自分にできたことがあったんじゃないかって、今でも心残りなんだよね。」
子供や後継者がいないのにお墓を建てた、老夫婦の話
このケースは寸前のところで無縁仏にはなりませんでした。
しかし、どこかで歯車がうまく噛み合わなかったらどうなっていたことか、、、
それはある夏のお盆のお経参りに行った時のことです。
「8月の頭に親戚が亡くなって、ドタバタしてたんだ。何とか葬儀は終わらせたけど、これから仏さん(お骨)をどうしたらいいか。」
といった相談を受けました。
よくよく話を聞いてみるとこんな事情でした。
- 親戚は何名かいるが、直接的な後継者がいない
- したがって、お通夜や葬儀は親戚のみで行った
- 通夜葬儀の読経は、菩提寺(関わりのあるお寺)が不明なので葬儀社に依頼した
- 15年前に建てたお墓はあるが、そのお墓をどうしたらいいかわからない
- そのお墓にお骨を納めるのは、管理等の問題でみんな気が乗らない
- 無縁仏になるのはかわいそうだけど、この場合は仕方ないのか
- お骨は葬儀をしてくれたお寺が善意(おそらく)で預かってくれている
- そのお寺の永代供養が100万だと言われ、そんなには出せない
- どこかに永代供養を検討しているが、そもそも永代供養の意味がわからない
結果的に今回のケースは、全ての問題を親戚みんなが納得のいく形でクリアしたので一件落着にはなりました。
タイミングよくご相談いただけたので無縁仏にはなりませんでしたが、、、
どこかで歯車がうまく回らずに進んでしまったら、今もまだ宙ぶらりんのままだったでしょう。
そして、多くの場合は物事がうまく回らないと無縁仏になってしまうケースが大半です。
お墓が遠くてお墓参りに行けず無縁仏化してしまった、家族の話
このケースは取り返しのつかない結果となってしまいました。
家族や後継者がいたとしても無縁仏化してしまうことがあります。
色々と事情があって複雑なのですが、簡単にご説明すると以下のようなことです。
- おじいちゃんが生きていた頃、家族のためにお墓を建てて、仏壇を購入した
- その霊園はお墓参りに行くだけで1日かがりになるような場所にある
- お墓を建てた数年後におじいちゃんが入り、続けてそこにはおばあちゃんも入った
- 親戚は日本各地に住んでいるので、回忌法要はこちらで行うと連絡していた
- おばあちゃんの三回忌まではしっかりと墓前で法事をしたがそれ以降はやらなくなった
- 後継者の息子やその妻は仕事が忙しく、盆暮れ、両彼岸も働きずめ
- 仕事の都合で住居を変えることが多かった
- 子供は外国に留学、そのまま国外で就職
- 霊園から管理費の請求が来ていたが支払い忘れていた
- ふと、お墓のことが気になり久々にお墓参りに行くことにした
- いざ行ってみると、あるはずのお墓がなくなっていた
- 管理事務所に聞いてみると、管理費の不払いのため撤去したとのこと
- 霊園側も再三の連絡を試みたが不通の状態が10年続いていた
- 墓地の使用条件に従い、法的手続きを経てお墓を撤去した
- お墓に入っていたお骨は霊園内の無縁墓地に合祀された
- 合祀墓なので中に入ったお骨は取り出すことが不可能(他の骨と混ざっているため)
今回の場合は、後継者はいるのに「無縁仏化」になってしまったケースです。
何よりも悔やまれるのが、合祀墓に入ってしまった為、お骨を取り出すことが事実上不可能だということです。
大半の合祀墓は他のお骨と混ざってしまうので、後から取り出すことがで実質できなのです。
ご家族は取り返しのつかないことをしてしまったと言っていました。
続けて、こうも言っていました。
「これは『たら、れば』の話になってしまいますが、、、
- 墓地が近かったら(遠くなければ)
- 仕事が忙しくなかったら(忙くなければ)
- 管理費を払い忘れていなかったら(払い忘れなければ)
結果は変わっていたのだと思うと、今でも後悔している」
涙ながらにおっしゃっていました。
そして、自分たちにとっては不本意なお墓の撤去の費用を請求されたそうです。
無縁仏になってしまう方の共通点
さて、これまで無縁仏になってしまった3つのケースをご紹介しました。
これらのケースも含め、無縁仏になってしまうにはある共通点があります。
それは、「お墓を取り巻く業界(供養業界とも言います)の不適切な対応」です。
ケース1の場合でしたら、「葬儀社」
ケース2の場合でしたら、「石材店」と「菩提寺(関わりのあるお寺)」
ケース3の場合でしたら、「霊園業者」と「仏具店」
そもそも「供養業界」の方達は無縁仏にさせたくて、色々な提案をしているわけではなく、無縁仏になって欲しくないから色々な提案をしてくるわけです。
がしかし、結果として無縁仏になってしまったのは「供養業界の不適切な対応」が原因なのです。
供養業界で働いていれば自然と「無縁仏になりそうな方や予兆」がわかります。
例えば、、、
- 自分が亡くなった後、墓守をしてくれる人がいない方
- 墓じまいを検討しているけど行き先が見つからない方
- 遠方に住んでおりお墓参りに行けない方
- 特定のお寺とお付き合いがない方
- お墓にあまり費用をかけられない方
- 生前に自分の納得いくお墓を用意しておきたい方
- 掃除や供養を含めた管理をお願いしたい方
- 後継者がいないため、生前にお墓を決めておきたい方
上記のような方や予兆が見えながらも、目の前にある自分たちの利益を優先させる、
供養業界の自分勝手さが結果的に無縁仏を生み出してしまうのです。
遠い場所にお墓を作ってしまったケースがとてもわかりやすいかと思います。
お墓参りに行くことが大変なことになるとわかっているのに、契約させてしまうのはその証拠です。
私が今まで無縁仏に関する相談を受けた方の話を聞いていると、
「話を聞いているうちに『なんか思っていたこととは違う』と思いながらも、自分たちの商品ばかりを勧めてくる業者に違和感を覚えた」
なんて話をよく耳にします。
それは「不適切な対応」以外の何ものでもありません。
ちなみにですが、、、
ケース1でご紹介した「網棚に置かれたご遺骨」を担当された田島さんは、当時のことがきっかけで、数年後に独立しました。
「供養業界の不適切な対応を変えていきたい」
そんな思いで、単身者世帯の支援団体運営に力を注いでいます。
慶国寺の室内参拝型の納骨堂を建立した目的も田島さんと同じ思いです。